シェフごはんコラム

日本料理に欠かせない究極のうま味!「和のだしと基本のスキル」

日本人だけでなく、海外の人々をも魅了する「和食」。その根底には“精進料理”の考え方がある、とも言われています。それは、季節感を重んじ、魚介肉類ではなく、野菜や海草類を愛情と手間ひまをかけて調理したもの。“精進料理”というと、仏教寺院での料理、というイメージですが、仏教は、6世紀に伝来してから現在に至るまで、日本人の生活に寄りそってきたもの。和食の成り立ちのひとつを担っていると言っても不思議はありません。

そんな和食にとって最も大切なエッセンスである「だし」を今回は学びます。また、そのだしを使った一品も合わせて、伝統的精進料理を極める泉竹料理長 鈴木邦昌さんに教えていただきました。

精進出汁

精進出汁

動物性の食材を一切使わず、昆布のうま味をギュッと凝縮させただし。だしのうま味に奥行きをつけるため、2種類の昆布を合わせて使います。「昆布」とひと言でいっても、人間と同じく、育った環境によって味や粘りに異なる特長があらわれるので、その特長を理解しておくと、料理に応じて使い分けができますね。また、最大のポイントは、温度。昆布のうま味成分が抽出される65度でキープしておくのがベストです。グラグラと沸騰させてしまうと、昆布の粘り気や雑味がでてしまうので要注意。不安なら料理用の温度計を用意しておくと安心です。他に、うまみの相乗効果を使った鰹出汁 鮪出汁も。

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野菜の白和え(白酢和え)

野菜の白和え(白酢和え)

精進出汁を使ったメニューの中でも、食材の切り方や下ごしらえの仕方、出汁の使い方など、さまざまな調理の要素を一皿に凝縮させた、まさに手間ひまをかけた一品。特に和食では、食材ひとつひとつにそれぞれ下ごしらえを施すのが基本。どのステップも手を抜かず、丁寧に行ってはじめてひとつの料理になります。野菜の切り方など、不慣れなときはゆっくり時間をかけてOK。特に白和えの場合は、水気をしっかり切ることが大切。豆腐、具材、ともに、水切りが甘いと味がぼやけてしまうので、注意が必要です。手をかけた分、そのおいしさは感動もの。

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さて和食を極めるとなると、どうしても必要となってくるのが、和包丁。和包丁にも様々な種類がありますが、洋包丁と大きく違うところは、片刃であるということ。用途別に多くの種類がある和包丁は、それぞれが、より美しく、より切り口が綺麗になるように、食材が傷まないように、美味しく食べられるように、という日本人ならではの観点で作られています。千切りひとつとっても、繊維に沿って切ったものと、繊維を断つように切ったものは見た目も食感も異なります。この、日本料理ならではの“美しく切る”技法には、きっちり研いだ切れ味の鋭い包丁が欠かせません。10月中旬より、包丁の持ち方、研ぎ方から野菜の切り方までもシェフごはんで学べますのでお楽しみに!

和食の根底にあるのは、食べる人への気遣い。調理法も、味付けも、見た目を美しく仕上げるのも、寸法にこだわるのも、すべてはおいしく健康に食べてほしいと願うから。しっかり腰を据えて日本料理に取り組むなら、ぜひ、あなたの大切な人に食べてもらうことをイメージしてみて。手間ひまも、きっと楽しさに変わるはずです。

文:一杉さゆり
写真:福田栄美子

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