シェフごはんコラム
素材の持ち味を大切に。ひと手間が違いを生む「広東料理」レシピ
玻璃蒸蝦餃(広東風 海老蒸し餃子)
今や世界共通語とも言える「飲茶(ヤムチャ)」、実は広東語。飲茶とは、朝食、茶請け、間食として中国茶を飲みながら点心(軽食)を食べる習慣のことで、広州では、点心の味だけでなく美しさにも工夫が凝らされているのが特徴です。蒸すとガラスのように透き通る、ぷるぷるの皮が特徴の海老蒸し餃子もそのひとつ。具の下ごしらえにはプロならではのひと手間を。たけのこの水煮は、2度ゆでこぼしてしっかり臭みを抜きます。豚の背脂は、豚ロース薄切り肉の脂身を刻んで使います。なければラードでも。中国では、餃子は縁起のいい食べ物とされています。ぜひ、あやかって♪
滑蛋蟹肉(広東風 ふんわりかに玉)
日本で「かに玉」というと、とろみのあるタレをかけたものですが、総じて薄味で、素材のうま味を生かすのが特徴の広東料理、かにと卵の味を楽しむためにタレはかけません。ポイントとなるのが油の量。多すぎると油っぽいベタッとした仕上がりに。逆に少なすぎると鍋肌に卵がくっついてしまったり、美しく焼き固まらなくなってしまいます。シェフのレシピ通り、まず鍋をよく熱して油返しを行い、改めて炒め用の油を引き、焼きに臨みましょう。ふわっふわでトロトロのレア状態に仕上げるため、お玉でむやみにかき混ぜたりせず、鍋の上で滑らせるように、表面だけを焼くイメージで。
冬瓜燉鶏翼(広東風 冬瓜と鶏手羽元の薬膳蒸しスープ)
中国南部に位置する広東省は、一年を通して気温が高く、夏は多湿。医食同源の考え方もあって、生薬となる食材を取り入れたスープを日常的に食し、夏バテ防止や健康維持に役立ててきました。だから広東料理はスープの種類も実に豊富。今回は、薬膳でおなじみのハスの実やクコの実を加えて、蒸し器で蒸し上げて作るスープを紹介します。冬瓜、手羽元、ハスの実、ドンコ椎茸・・・食材それぞれの下ごしらえをしっかり、丁寧に行うことで、水に塩とグラニュー糖をひとつまみ入れただけのスープ水が、臭みもアクもない澄んだスープに生まれ変わります。その滋味深い味わいにうっとりすること間違いなし。
日本でも親しまれているメニューが多い広東料理。それは、昔から広東省出身の華僑が多かったことの影響もありますが、ここまでポピュラーになったのは、食材の味を活かしたあっさりした味つけが、日本人の味覚にもマッチしたからに他なりません。普段の食事にも、ちょっとしたおもてなしにも最適な3品、お試しあれ!
文:一杉さゆり
写真:千々岩友美