食材と生きる

岡山県備前市日生頭島 リストランテ テラダ 寺田真紀夫

岡山の食材を使って風土を表現すること。僕の思う料理人の理想はそこにある。

岡山市内に予約がとれない人気店がある。大通りから一本入った道にひっそりと構える「リストランテ テラダ」だ。岡山県産の食材を使い、ここでしかできない料理を創造する。その料理を味わいに、全国はもとより、外国からも客が訪れる。

岡山には「自然の恵み」と「職人の情熱」が共存している

2000年に岡山市内に「リストランテ テラダ」をオープンして、16年が経ちました。2014年に移転し、無垢ケヤキのカウンターを挟んで調理場がある、現在の割烹的なスタイルになりました。

独立した頃の店は、元レストランの居抜きで、僕がしたことといえばランチョンマットを新調したことくらい(笑)。最初の移転では「岡山の人たちに本当のイタリア料理店を知ってほしい」と、家具もイタリアから取り寄せて、正統派リストランテを作りました。食器はもちろんジノリ。でもそのうち、「もっと岡山ならではのことができるのでは」と思い始めました。

例えばイタリアの友人が僕の店に来たときに「なんだ、ここはイタリアのようじゃないか!僕は岡山に来たというのに」と感じるかもしれない。遠方からわざわざお越しくださる方に、ああ岡山に来たなと感じてもらえる表現はないかと思ったのが出発点です。

岡山には「自然の恵み」と「職人の情熱」が共存している

地方の料理人はどうあるべきか、という問いは、ずっと僕の中にあります。以前は「本場のイタリアを地元の人に知ってもらう店」だった。今は土地の良さをいかに出せるか、表現していくかにかかっている、そこが自分を表すキーワードのひとつだと思っています。

僕は岡山の出身です。高校を卒業してから飲食業の仕事をしていて、イタリア料理を始めたのが20歳の頃。作業が早いとか、おそらくそういうところで重宝がられたんですね。21歳で店長になりました。24歳で独立するまでに料理長も数店舗でさせてもらいました。若いときにチャンスをもらって、早い段階で様々な経験ができたことが自分の力になっています。

イタリア料理の料理人としてのキャリアを考えたときに、選択肢はいくつかあります。東京などの都市のグランメゾン、リストランテで修業するか、はたまたイタリアに渡り現地の店で修業を積むか。僕はそのどれも選ばなかった。岡山を離れたくなかったんです。

岡山には「自然の恵み」と「職人の情熱」が共存している

岡山って長方形をしていて、一辺の距離がどこも車で2時間程度かかります。南には瀬戸内海、北には中国山地があり、各産地の標高差は800~900mにもなる。岡山の食材を本気で知ろうと思うと時間が必要なんです。だから僕はなるべく岡山にいる時間を長くして、生産者と知り合うチャンスを少しでも増やしたかった。

誤解を恐れずに言うと、客観的には岡山の食材がすべて日本一だとは言えないだろうとは思っています。岡山産の食材よりも優れておいしい産地を探そうとすればあるのかもしれない。

とはいえ、僕は岡山の食材が最高だと思うし、一番魅力を感じます。でもそれは「岡山の良さに気がついたから岡山産の食材を使う」のではなく、「岡山の料理人は岡山の食材を使う」という信念から生まれた態度と表現したほうが正確かもしれない。自分が生まれ育った岡山という土地と心中することが、僕が理想とする料理人の姿なのです。

網を海の中につぼ状に張り込み、魚を追い込む「つぼあみ漁」の手法は、岡山の日生(ひなせ)が発祥と言われている。

▲網を海の中につぼ状に張り込み、魚を追い込む「つぼあみ漁」の手法は、岡山の日生(ひなせ)が発祥と言われている。

岡山には豊かな瀬戸内の海があり、山があり、その中に豊かな食材がある。また研究を重ねて果樹栽培の技術を上げてきた歴史がある。豊かな自然だけではなくて、そこに職人的な作りがある。岡山の食材には「自然の恵み」と「人の情熱」を同時に感じることができるんです。

イタリアには料理の「さじ加減」を確かめに行く

独立してから初めてイタリアに行きました。僕が26歳のときです。以来、イタリアには定期的に行っています。トスカーナとプーリアが好きで、現地の友人も増えました。

だからといって、僕がイタリアに行くのは「イタリア現地の料理に近づくため」ではないのです。むしろ、どこまで離れても「イタリア料理」として成立するか、そのさじ加減を確かめに行っています。

僕が目指すのは現地そのもののイタリアンではなく、いわばイタリア料理の手法を使った岡山の料理。でもイタリアに行くと、彼らが感じることや考えることがとても自分にしっくりときて、そういうとき、「イタリアと肌が合うんだなあ」と感じます。

イタリアには料理の「さじ加減」を確かめに行く

パスタは出さない。岡山を表現できるプリモピアットは米を使ったリゾット

『リストランテ テラダ』では、料理の核となる食材はすべて岡山産のものを使っています。パスタは出さない。スペシャリテはリゾットです。パスタを出したくないのではなくて、岡山の食材を追求すると自然と「米」になるんです。現在使っているのは岡山県北部の鏡野町で安藤さんという米農家さんが作るあきたこまち。味わいの深い小さめの粒です。

僕たち料理人は1から10までを作り出せるわけではない。生産者さんが作ってくれたものの力をお借りして、そこに何か自分らしさを込めて料理を作るという、いわば中間地点を担っています。その点で、食材は「どういう人がどういう気持ちで作ったか」が非常に大切になってきます。それがないと最終的な料理に勢いがでないし、人の心を動かす料理は作れない。常に産地を巡っていますが、最終的に自分が使うかどうかは、「どんな人が作っているか」。作り手のスピリットは、如実に作物にあらわれますね。  (後編に続く)

瀬戸内海産ニシ貝と鏡野町産岡山米のリゾット

瀬戸内海産ニシ貝と鏡野町産岡山米のリゾット

特長

スペシャリテのリゾットです。サザエで作ることもありますが、今回は瀬戸内海でよく獲れるニシ貝を使います。お米の粘り気が出ないようにする、僕オリジナルの作り方です。

コツ・ポイント

米の食感・旨みがしっかりと感じられ、米にクリアなソースが絡むように、たっぷりのスープで米を煮て、後で水分を捨てるというオリジナルの方法で仕上げます。お米の粘り気が出ないという効果も。リゾット用の米は、他の具材と調和しやすい小粒の品種が合います。

レシピを見る

リストランテ テラダ

リストランテ テラダ

〒701-3204

岡山県備前市日生町日生2766-3(開店準備中)

TEL 0869-92-4257

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  • 文:柿本礼子
  • 写真:株式会社スタジオヱヴィス