お酒と料理

望月英雄 / 日本料理 太月 塩味(えんみ)を感じる奥尻島のワインと、海の旨味

表参道の喧騒から1本路地を入ると、すっと閑静な落ち着きのある街並みが広がる。それが青山という街の魅力の一つだ。

そのエリアの地下1階に、まさに知る人ぞ知るという形で「日本料理 太月」はある。おいしいもの好きの間では頼りになる一軒であり、実はあまり人に教えたくないフードアドレスかもしれない。白木のカウンターには夜毎、好みの一杯とともに馳走を楽しむ人々が席を連ねている。

店主の望月英雄さんは、「龍雲庵」「玄冶店(げんやだな)濱田家」「割烹 喜作」といった懐石料理や割烹の一流店で修業を積んだ。現店の屋号は、神奈川にあった実家の料理店のものだという。

「日本料理店で、鉄板焼き、しゃぶしゃぶ、すき焼きも出すようなお店でした。日本酒だけではなく、ワインもその地域ではよく出ている店だったと思います」

そうした環境で育ったからか、修業時代から日本料理とワインの相性にも興味があったという望月さん。独学と実践でワインを学び、現在は日本酒とワインを揃える。お客さんの好みに応えられる幅を持ちながらも、セレクトには個性が光る。

ワインの塩味に柑橘の酸、そして魚介のしっかりとした旨味を重ねて

ワインの塩味に柑橘の酸、そして魚介のしっかりとした旨味を重ねて

日本料理とワインの関係について真剣に取り組んだのは、修業時代も後半に差し掛かってきた頃でした。ある時から「今日はワインを飲むお客様が多かったね」と話すことが増えたんです。お昼に、グラスシャンパンはありますか?と聞かれることも増えました。その頃から、日本料理が世界に出た場合、合わせる飲み物として日本酒とワインは選択肢として同じ土俵に立つことになるだろうと、だから日本酒と同じようにワインについて知っておく必要があると感じていました。

いま、お店で出す白ワインは、シャルドネ品種のものが多いですね。樽香が強すぎたり、甘味が強いものは、日本料理のだしに代表される繊細な香りを覆ってしまうことがありますが、エレガントなタイプのシャルドネは、魚介との相性がいいためよく使います。

今回は「日本のお酒(ワイン)」というテーマだったので、北の方のワインで、シャルドネ品種のものをと選びました。奥尻島で作られているワインです。まだ樹齢も若く、ブドウの味わいも「ふくよか」というよりも「若々しい」という印象です。エレガントな中に塩味(えんみ)やリンゴのようなフレーバーがあるのも特徴。キリッと冷やして飲みたい一本ですね。

そのあたりを踏まえて、今回は旨味と柑橘の酸を軸に合わせました。ワインに海を感じるフレーバーがあるので、魚介の旨味と香りを合わせます。そこに「すだち」の上品な酸を加えることで、魚介の生臭さが抑えられ、上品な柑橘の香りがワインと料理をつなぎます。

1.鯛の旨味と脂が、ワインに膨らみを与える『鯛骨蒸し すだち餡掛け 白髪ネギ』

「奥尻 シャルドネ」には魚介の旨味を合わせたいですね。塩味と、みずみずしい酸がありますので、魚介の旨味を合わせることで、ワインに膨らみを与えます。

1.鯛の旨味と脂が、ワインに膨らみを与える『鯛骨蒸し すだち餡掛け 白髪ネギ』

鯛の蒸し物は塩をふる、お湯をかけて霜降りにする、日本酒をふりかける、と3つの下ごしらえで魚の臭みを抜いています。脂が乗っている鯛でしたら、少し塩を強めにふってもいいでしょう。逆に鮮度のいい鯛が手に入った時には、塩や日本酒の量を気持ち控えめにして、素材の味を十分に引き出すことを意識してもいいかもしれません。

すだちは柑橘の中でも、最も上品な酸を持っていると思います。角の取れた、香り豊かなすだちは鯛ととてもいい相性です。ワインと魚をつなぐ役割も担ってくれますね。

2.ウニのコクと淡白なヒラメを、昆布の香りで。『平目昆布締め 生ウニ巻き 花穂紫蘇』

平目とウニのお造りは、当店でもよく出しています。このミネラル感は奥尻島のシャルドネとぴったり合うのではと思います。

2.ウニのコクと淡白なヒラメを、昆布の香りで。『平目昆布締め 生ウニ巻き 花穂紫蘇』

お店では、活け〆で1日寝かしたものを昆布締めにします。締める時間は、軽く重石をして1時間弱。切り身の状態を見て調整しています。塩を振って昆布締めにしても美味しいです。

この平目でウニを巻き、すだちの割り醤油でいただきます。こちらも考え方としては、1品目と同じく奥尻ワインのシャルドネが持つ塩味を海の幸と合わせ、柑橘の酸で繋げるという手法。それぞれ単体で食べてから合わせると、お互いが引き立てあっていることをお感じいただけると思います。

旨味のバランスをとる

塩味ということのほかに、今回意識したのは「旨味のバランスをとる」ということです。

例えばボルドーなどで造られるフルボディの赤ワインに日本料理を合わせる時には、たれの量を増やし「強×強」でバランスをとるという手法もあります。今回は比較的華奢な印象のあるワインでしたので、強い旨味を合わせてバランスをとるという考えで作りました。

鯛骨蒸し すだち餡掛け 白髪ネギ と 平目昆布締め 生ウニ巻き 花穂紫蘇

鯛骨蒸し すだち餡掛け 白髪ネギ と 平目昆布締め 生ウニ巻き 花穂紫蘇

コツ・ポイント

鯛は身質(脂の乗り、鮮度など)に応じて塩の塩梅を調整し、臭みを取り除きます。

平目のお造りは、鮮度の良いものを選ぶこと、そして昆布締めにする時間がポイントです。

OKUSHIRI Chardonnay

OKUSHIRI Chardonnay

分類:白ワイン

葡萄の品種:シャルドネ

生産地方:北海道奥尻島

味わい:辛口

アルコール分:11%

奥尻ワイナリー/北海道南西部の離島、奥尻島で2008年に完成したワイナリー。ブドウ畑は1999年より、島に自生する山葡萄の苗木の植樹から始まり、現在では27ヘクタールに欧州ワイン品種(シャルドネ、ピノ・グリ、ケルナー、メルロー、ピノ・ノワール、ツヴァイゲルトレーベなど)を中心に、約6万5000本が栽培されている。発売しているワインはほぼモノセパージュ(単一品種)。どれも海を感じる味わいだ。

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  • 文:柿本礼子
  • 写真:牧田健太郎