お酒と料理

高橋直史 / イル ジョット 華やかでコクのあるクラフトビールを楽しむ料理

駒澤大学駅から公園通りを歩いて15分の場所に「イル ジョット」はある。

決してアクセスがいいとはいえないロケーションながら連日人気のわけは、店内に一歩足を踏み入れると「ああ!」と感じるはずだ。温かみのある空間の中に丁寧に選ばれた家具がしっくりとはまり、広々と取られたカウンターの奥にはキッチンスペースがフラットに続いている。出されるお料理はもちろん、ここで過ごす時間で、心身がリセットされていくような清々しさがある。

シェフの高橋直史さんは、2001年に同店を作った。

「修業時代、イタリアのエミリア=ロマーニャ州の一ツ星レストランで働きながら、近隣のトラットリアによく食べに行きました。トマトソースのパスタとか、シンプルだけど土地に根付いた味に惹かれて。自分でお店を出す時も、シンプルなお料理を作っていこうと考えていました。今でもそれは変わらず、一つのお皿の構成要素はなるべく少なく、素材をシンプルに、全面に出すことを意識しています」

モクモク手づくりファームは、ハムだけでなくビールも美味しい

モクモク手づくりファームは、ハムだけでなくビールも美味しい

お店で出すのはイタリアのワインが多いです。色々と飲んでいただけるように、グラスワインを赤と白3種類ずつ用意しています。

僕もお酒を飲むのは好きです。営業が終わった時に一杯ビールを飲むと、片付けも頑張れる(笑)。その後、お肉を少しだけ食べて、合わせて赤ワインを飲む。この時間が楽しみです。

休みの日に飲むのはビールやスパークリングワインが多いかもしれない。しゅわしゅわと軽くて優しい味わいのものを好んで飲んでいます。

今回選んだのは、三重県伊賀市の「伊賀の里モクモク手づくりファーム」で醸造している「ゴールデンピルスナー」です。モクモク手づくりファームは六次化産業の成功例として有名で、ハムやソーセージを食べたことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。このピルスナーは香りがあってコクもあって、それでいて口当たりは軽やか。食事と合わせやすいビールだと思います。香りが豊かなので、コップで飲む他に、ブルゴーニュグラスのような膨らみのあるワイングラスで飲むのもお薦めです。

1.酸の合わせがアクセントに。『豚ロースのキムチソテー』

「ゴールデンピルスナー」にはまず、豚肉料理を合わせたいですね。豚肉の甘やかな味わいにキムチの酸、オリーブやトマトの酸を合わせます。

1.酸の合わせがアクセントに。『豚ロースのキムチソテー』

イタリア料理は「酸」が決め手。飲み物にも料理にも酸があり、料理と飲み物の「酸を合わせる」という感覚があります。ピルスナーの持つ軽やかさとコクのバランスを、キムチ・オリーブ・トマトの酸で軽やかに調整するのですね。

今回は一般にはなかなか売られていないのですが、僕が惚れ込んでいる豚肉を使いました。「ゴールデンピルスナー」と同じ三重県の、「愛農学園」という農業高校で育てられた「愛農ポーク」という豚です。特に脂身がとても優しく甘やかで、焼いている間も臭みを一切感じない。ご家庭ではとんかつ用の豚のロース肉をご用意ください。豚肉の甘みや旨みに、酸を合わせることで一層軽やかな一皿になります。キムチの辛みも、ビールといい相性ですね。

2.チーズのコクでビールが進む『季節のグリーン野菜のオレキエッテ』

当店の定番料理で、季節の緑野菜を数種類入れたソースのパスタです。オレキエッテはイタリア語で耳という意味。野菜の苦味や甘みも、ピルスナーのビールに合うのではと思います。

2.チーズのコクでビールが進む『季節のグリーン野菜のオレキエッテ』

イタリアには「チーマ・ディ・ラーパ」という菜の花に似たアブラナ科の野菜があり、それをオレキエッテに合わせます。日本でもあの味を再現したいと、複数の緑野菜を使う手法を考え、開店時からずっと通年出しています。

ここでのアクセントはパルミジャーノチーズ。チーズのコクがビールの味わいをさらに膨らましてくれますね。この料理にはキレのいい白ワインを合わせることも多いのですが、「ゴールデンピルスナー」はそれに通じる軽さや飲みやすさも感じます。

コクと酸味がポイント

ビールは食前酒的に飲むのはもちろん、食中酒としても万能ですね。食中酒としてビールを飲む時は、香りや味わいの個性が強いものよりも、ある程度の軽さや飲みやすさがあるものがいいと思います。

一緒に食べる料理のコクと酸のバランスを考えて、ビール選びをしても楽しいですね。今回のように食材とビールを同じ産地のものにしてみるのも、新しい発見があるかもしれません。

豚ロースのキムチソテー と 季節のグリーン野菜のオレキエッテ

豚ロースのキムチソテー と 季節のグリーン野菜のオレキエッテ

コツ・ポイント

豚料理は複数の酸味を合わせると、味わいに広がりが生まれます。

オレキエッテは、グリーン野菜の凝縮感がポイント。緑色を際立たせるため、茹でた葉野菜をミキサーにかけたグリーンペーストを最後に絡めます。

ゴールデンピルスナー

ゴールデンピルスナー

分類:クラフトビール

原料:麦芽、ホップ

生産地方:三重県

スタイル:ピルスナー

味わい:クリアな喉越しとふくよかな味わい

アルコール分:5.0%

モクモク地ビール工房/1987年に創業された「ハム工房モクモク」が原点となり、生産者と消費者の関係性を育む形での農業を目指す。1995年に農業公園「伊賀の里モクモク手づくりファーム」を開園。地ビール工房も作られた。地元産の大麦を使い、30種類以上の酵母を選択してバラエティに富んだビールを作る。「ゴールデンピルスナー」は地元農家の二条大麦を100%使用。3種類のホップを使い、40日間熟成。軽やかさがありながらも、華やかな香りとコクのある味わいが特徴だ。

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  • 文:柿本礼子
  • 写真:牧田健太郎