ピックアップシェフ

徳永 純司 ザ・ショップ N.Y.ラウンジ ブティック   ドキドキする感覚を失わない限り、いい仕事ができていると感じる。

自分の実力を知りたくてコンクールに参加し続けた。

感性を自由に発揮できるチョコレート作りに没頭。

25歳のとき、私は『ザ・リッツ・カールトン大阪』のフレンチレストラン『La Baie』に転職しました。レストランのデセール部門ですので、フランス人シェフから指示を受けて、主にコース料理のデザートを担当していました。当時はまだ若かったので、いつかフランスに行って洋菓子の修業をしたいと思っていましたけど、周りのスタッフは半分ぐらいがフランス人。シフトによっては、私以外は全員フランス人、ということもよくあって(笑)。会話はうまくなりませんでしたが、何となく意思の疎通はできるようになっていました。ただ、彼らの仕事ぶりを見て、だんだんフランスに行く必要ないかな、と思うように。というのも、びっくりするような奇抜なことをしたりするんですよね。やっぱり彼らと日本人の感性は違うし、ちょっとこれは自分が目指すものとは違うかな、と感じ始め、最終的には、このまま日本にいて自分らしい感性と技術を高めていこう、と決めました。
『ザ・リッツ・カールトン大阪』では、自分がいちばんやりたかった《アシェット・デセール》に没頭できたので、思い起こせば充実した楽しい時代でした。ちょうどその頃、『ザ・リッツ・カールトン東京』がオープンするという話を聞きました。一度は東京で仕事をしてみたかったので、迷うことなくペストリー部門への転勤希望を出し、オープニングスタッフとして東京に引っ越しました。ペストリー部門にはチョコレート専門のセクションがあり、希望が叶ってそこで働き始めることになりました。そのときからですね、チョコレートに、ますますのめり込んでいったのは。もしかして自分はチョコレート作りに向いてる?と思ってしまって(笑)。

感性を自由に発揮できるチョコレート作りに没頭。

仕事以外の時間はすべてコンクール作品に費やした。

普通、手でチョコレートを触ると体温で溶けてしまいますが、私が触ると逆にチョコレートが固まるほど手が冷たくて(笑)、チョコレートの作業がすごくやりやすかったんですよ。最近はそれほど冷たくなくなりましたけどね。まぁそういう冗談なような理由もありまして、チョコレートの加工がどんどん楽しくなっていきました。まだその頃は『チョコレート・ピエスモンテ』(※コンテストに出品するオブジェ状のチョコレート細工)を作りたいとかではなく、店に出すおいしいボンボンショコラを作りたいというのが目標でした。
『ザ・リッツ・カールトン東京』に入社したころは、上司の指示通りに動くだけでしたけど、徐々に力を認めてもらうようになると、自分の感性でお菓子を作るようになりました。しかし最終決定はシェフなので、作ったものが180度変えられることなんてしょっちゅうです。そういう時の悔しさが、私をお菓子のコンクールに向かわせた原動力になったかなと思います。当時は自分が好きなものを自由に作るというのは、コンクールしかなかったんですね。仕事以外の時間は、とにかくコンクール作品のことだけ考えていましたし、手あたり次第応募していました(笑)。
コンクールの魅力は自分で考えたものがそのまま出品できること、そして評価されることで自分の位置がどれくらいなのか分かることです。優勝すれば次のコンクールに向かうモチベーションにもなります。なかでも思い出深いコンクールは、2位になった『クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー 』の国内予選です。残念ながらそのときは日本代表になれませんでしたが、そのとき完成させたデザートは今も自信作ですし、その次の国内予選で優勝する原動力になりました。日本チームで出場した2015年の世界大会で準優勝したときは、今までの苦労が実を結んだ気がしました。

仕事以外の時間はすべてコンクール作品に費やした。

新天地で自分の可能性を広げられる幸せ。

2016年の春、『ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ』に入社した私は、エグゼクティブ シェフ パティシエとして『ザ・ショップ N.Y.ラウンジ ブティック』のケーキを一新する仕事から取り組み始めました。新天地で自分の可能性を試したかった私にとって、これ以上ないほどドキドキするお仕事をいただき、ありがたかったですね。しかしその反面、生菓子を全面的に変えるのですから、私一人の力では到底できないことです。優秀なスタッフの力を借り、5月23日に予定通り、ミッションを遂行することができました。途中、私自身が40度近い高熱を出して寝込んでしまった期間があったのですが、あれは知恵熱だったのかなぁ(笑)。まぁ、無事にリニューアルできて心底ホッとしました。
ケーキを新しくするにあたり、いちばん大事にしたのは、老若男女、誰が食べてもおいしいものを作りたい、ということです。クリームの配合から何から何まで全て変えました。その変更に最も苦心しましたけど、私がやるからにはそこまでやらないと意味がないと思ったんです。その甲斐あって、誰もが大好きな定番のショートケーキやシュー ア ラ クレームはおかげさまでよく売れていますし、私のスペシャリテともいえるモンブランやチョコレート系のケーキも、嬉しい評価をいただいています。
今は目の前の仕事に集中していて、先のことはまだあまり考えられないのですが、大事なチームであるスタッフ個々の能力をもっと上げて、お菓子のクオリティを高めていきたい。それが今の一番の目標です。

新天地で自分の可能性を広げられる幸せ。

しっかりしたスポンジの『イチゴのショートケーキ』

子どもの頃のケーキの思い出と言えば、誕生日に母が買ってきてくれたイチゴのショートケーキです。とにかく甘いものが大好きだったので、ホールケーキを一人で1個ペロリと食べていました(笑)。今回お教えするレシピは、私が5年ほど前から作り続けている方法ですので、今ブティックで販売しているものと全く同じものです。特徴は弾力のある目がしっかり詰まったスポンジでしょうか。私自身、フワフワすぎるスポンジが好きではないので、ずっとこの方法で作っています。
もっと弾力があったほうがいいという場合は、卵やグラニュー糖を温めずに、冷蔵庫から出したまま、生地がひらひらとリボン状に落ちるようになるまで泡立ててみてください。材料が冷たいと泡立てるまでに時間がかかりますが、より一層目が詰まった、低反発マットのような弾力のあるスポンジに焼き上げることができます。私はそのほうがおいしいと思いますので、一度このレシピで作られたら、次は冷たい材料でチャレンジしてみてください。もうひとつ、お菓子は計量がとても大事なので、きっちり正確に計ってくださいね。

イチゴのショートケーキ

イチゴのショートケーキ

コツ・ポイント

クレームシャンティは8~8.5分立てで、やや固めに泡立てます。スポンジに塗るときは一度下塗りし、もう一度上塗りして仕上げます。ろくろがあるとよりキレイです。イチゴのケーキは作りたてよりも、1日置いたほうがイチゴにもスポンジにもクリームがなじみ、より一層おいしくなります。

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  • 文:北條尚子
  • 写真:キッチンミノル