シェフごはんコラム

郷土色豊かな伝統の味を手軽に再現♪「基本のスペイン料理」

ヨーロッパ南西部に位置するスペイン。北はピレネー山脈を挟んでフランス、西はポルトガル、南はジブラルタル海峡を隔ててアフリカ大陸と接し、古の時代からさまざまな民族と文化が融合、他に類を見ない魅力をもつ国として世界でも人気を集めています。もちろん、食もその魅力のひとつ。スペイン料理は、地方によって豊かな個性をもっているのでひとくくりにするのは難しいのですが、今回は、特に美食天国として知られるバスク地方の郷土料理を中心にアラシダ嵐田憲和シェフに教えていただきました。シェフが渡西した際、衝撃を受けたというクラシックなスペイン料理。その味わいにあなたも虜になってしまうはず♪

タラのピルピル(タラのオリーブオイル煮)

タラのピルピル(タラのオリーブオイル煮)

スペインバスク地方は、「山バスク」「海バスク」ということばがあるほど、海と山の魅力それぞれを持ち合わせた個性的な地。ピルピルはそんなバスク地方の伝統的な郷土料理で、現地でも失われつつある料理のひとつ。レシピをひもとくと、「加熱によって、タラの皮と身の間にあるコラーゲンがゼラチンに変性し、旨味と一緒にオリーブオイルに溶け出す。そのオイルを攪拌することによって乳化させ、旨味たっぷりのソースに生まれ変わる」という実に化学的な料理。魚のコラーゲンは低温で変性するので、極弱火でじっくり加熱するのがポイントです。ちなみにピルピルとは、作っているときに聞こえるオリーブオイルの泡がはじける音が由来だとか。

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スズキのサルサヴェルデ(バスク風煮込み)

スズキのサルサヴェルデ(バスク風煮込み)

こちらもバスク地方の郷土料理。今ではスペイン全土で愛されている魚介の煮込み料理です。バスク料理は、シンプルなステップで、素材の持ち味を最大限に引き出すのが特徴。この料理も作り方は簡単ですが、魚介の旨味を全身で感じられる一皿です。一般的にホワイトソースはバターを使いますが、スペイン料理ではオリーブオイル。だからソースベースはとても軽やかで、濃厚な魚介の出汁との相性もピッタリ。何倍にもその美味しさがふくらみ、最後に加えるパセリがアクセントとなって絶妙な仕上がりに。バスク地方名産の微発泡ワイン“チャコリ”とともに味わいたい!

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アロス・コン・レチェ(お米のミルクデザート)

アロス・コン・レチェ(お米のミルクデザート)

スペイン・アンダルシア地方の伝統的なおやつ。今ではスペインだけでなく、中南米でも食べられています。お米を牛乳で煮込み、甘く味つけしたもので、米を主食にする日本人にはちょっと意外な食べ物ですね。シェフはスペインでの修業中、とあるレストランでこのデザートを食べ、その美味しさに感動。レシピを知りたいがためにそのレストランで修業したそう。ポイントは、生の米から煮ること。じっくり時間をかけることで、米の旨味、牛乳と生クリームのコクが引き出され、ミルキーで優しい味わいになります。冷やして食べるのがポピュラーですが、温かいまま食べても◎。

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バスクといえばタパス!といわれるほど、バルをはしごしながらタパスやピンチョスといった小皿料理を楽しむ時間が愛されています。折しも6/15は世界タパスデー。スペイン料理店にでかけタパスを味わうもよし、シェフのレシピにトライするもよし、思い思いにスペイン料理を楽しんでみましょう!

文:一杉さゆり
写真:榊智朗

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