シェフごはんコラム

悠久の歴史に育まれた「基本のペルシャ(イラン)料理」

遙かなる古代より、数千年にわたって繁栄を続けてきた中東。その歴史の中で、多様な食文化も育んできました。かつてペルシャと呼ばれた現在のイランは「まるでペルシャ絨毯のように彩り豊かで複雑」と言われるほど創意工夫が重ねられた食文化を誇っています。他の中東諸国にみられるスパイスたっぷりのホットな味つけではなく、ハーブと香りのスパイス、塩を中心としたマイルドな味付けが基本。日本人にも親しみやすいのが特長です。

そんなペルシャ料理を、20年以上前に来日し、現在ペルシャ料理レストランBolBol」 ホセイン・ボルボルシェフに教えていただきました。お話好きなシェフの語るイランのエピソードにも注目です。

ケバブ ジュージェ(鶏肉の串焼き)

ケバブ ジュージェ(鶏肉の串焼き)

中東全域でみられる串焼きのケバブは、イランでも日本でもポピュラーですね。イスラム教徒が人口のほとんどを占めるイランでは、豚肉はほとんど食べられていません。好まれているのはマトン(羊肉)ですが、鶏肉もよく食べられています。皮をむいた鶏むね肉は、スパイスとヒマラヤピンクソルトで下味をつけ、ヨーグルトのたれにしっかり漬け込むことで、やわらかくジューシーな仕上がりに。じっくり焼いた鶏肉に、焼きトマト、ピクルス、サフランライスをワンプレートに盛りつけるのがイラン流。イランの米は長粒種でパサパサしているので、バターをのせると食べやすく、風味もアップ。

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ホレシュテ バーミエ(おくらの煮込み)

ホレシュテ バーミエ(おくらの煮込み)

たっぷりのオクラと鶏肉をトマトとスパイス、レモン汁で煮込んだ、イランの家庭料理の代表格。イランでは「最高のシェフは家庭にあり」ということばがあるほど、家庭料理のレシピが豊富。日本と同じようにおもてなしの文化があるため、お客様が訪れると主婦たちは腕をふるってたくさんのご馳走を並べるんだとか。そんなときにも登場するのがこの料理。おくらは多めの油でしっかり炒めて青臭さを取ってから煮込むのがポイント。イランでは酸味が好まれるので、トマトだけでなくレモン汁の酸味も加えます。ライスと一緒に召し上がれ。

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ククサブジ(ハーブ野菜のオムレツ)

ククサブジ(ハーブ野菜のオムレツ)

イラン人にとって、ハーブは野菜の一部。「季節や体調、体質にあわせて、食べ物で健康のバランスを整える」という考えをもつイランの人々は、習慣的に野菜やフルーツ、ナッツなど食材の特性を知り、毎日の食事に使い分けてきました。ククサブジもそのひとつ。オムレツといっても、卵をつなぎとしてたっぷりの野菜を焼いたヘルシーな一品。ひっくり返すときに崩れるのを避けるため、卵液が焼き固まるまでじっくり焼きましょう。トッピングにフルーツ、付け合わせにトマト&ピクルスを組み合わせるのも、甘味と酸味を組み合わせるイラン流。

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「イランの人々にとって、料理は一番のアート。創造的なこと」と語るボルボルシェフ。ペルシャ料理をその食文化とともに伝えようと、料理教室も開催しています。知れば知るほど、ペルシャ料理の奥深さ、創意の豊かさに、あなたの知的好奇心は高まっていくはず!

文:一杉さゆり
写真:千々岩友美

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