理をはかる

奥田透 / 銀座 小十 『鯖』についての理

食材は、適した調理法によって最大のおいしさを発揮します。プロの仕事に学ぶ、基本の理(ことわり)。

ミシュランガイド東京の初版で三ツ星を獲得、以後連続して星を取り続け、日本料理人としてさまざまなメディアでも活躍されている銀座小十の店主・奥田透氏。その華やかなステージの裏側には、18歳から培ってきた技術、おもてなしの心、和食への愛が深く、どっしりと根を生やしています。和食の未来を憂いてパリへの出店も決心。魚のおいしさ、本物の和食を提供するため毎月現地へ足を運び、技を伝えているそう。その奥田氏に今回教えていただく食材は「鯖」。家庭でもおいしく食べられるポイントをおさえた手法、今日から実践できるコツが満載です!

鯖は、調味料の入れ方と火加減で味が決まります

調理法1.焼く:漬け込んだ鯖を焼き、タレを塗ることで照りを出す

切り目を細かく入れて味をしみ込ませる

POINT.1 -切り目を細かく入れて味をしみ込ませる

焼き魚をふっくら仕上げるには、魚自体の質も大切。一尾のときは顔が小さく見えるくらい胴体がずんぐりしているもの、切り身の場合でも肉厚なものが、脂がのっておいしいです。焼く前にみりんと醤油を混ぜたものに漬けておくので、5mm間隔、深さ3mm程度の切り目を皮目全体に入れておきましょう。切り目を細かくすることで味が入りやすく、焼いたときの皮目もきれいです。漬けだれは、漬ける前に少々取りおき、仕上げの塗り用にとっておきます。

八分焼けたら、弱火にしてタレを塗る

POINT.2 -八分焼けたら、弱火にしてタレを塗る

10~15分漬けたら表面の汁気を拭き取って、中火で焼いていきます。店では炭火ですが、ご家庭なら両面焼きグリルで皮目を上にして焼いてください。もうすぐ焼き上がるかな?という手前、八分ほど焼けたら刷毛で皮にたれを塗っていきます。ここで火は弱火にして、焦がさないように。乾いたらたれを塗る、この作業を3~4回繰り返すと、皮がパリッと香ばしく焼き上がり、照りが出ます。

鯖の幽庵焼き

鯖の幽庵焼き

コツ・ポイント

鯖は、肉厚なものが、脂がのっておいしいです。切り目は細かめに、等間隔に入れて漬けると、味が入りやすく焼いたときの皮目もきれい。最初は中火で焼き、八分ほど焼けたら弱火にして刷毛でたれを塗っていきます。3~4回に分けて塗ることで、皮をパリッと香ばしく焼き上げ、照りを出します。

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調理法2. 煮る:臭みをしっかり取り、味を煮含ませる

霜降りして洗い、魚の臭みを取る

POINT.1 -霜降りして洗い、魚の臭みを取る

煮魚の場合は、厚みのある部分に十字に切り目を入れて火の通りを均一にします。そして、大事なのが煮る前の「霜降り」です。魚をボウルに入れて熱湯を注ぎ、箸で身を少し動かして全体に行き渡らせます。鯖の表面が白くなったら流水でやさしく洗い、残っているうろこや血合いをしっかり落とします。これにより臭みが取れ、表面を熱でキュッと引き締めたことで煮崩れもしにくくなります。

味噌は2回に分けて加える

POINT.2 -味噌は2回に分けて加える

鍋は、鯖が重ならないように並べられる大きさがベスト。まずは鍋に鯖と水、酒、生姜を入れて強火にかけます。煮立ったら中火にしてアクを除き、砂糖、みりんの順に加えて甘みを浸透させます。味噌は2回に分けて。まず半量加えて落としぶたをしましょう。この1回目は鯖に味をしっかり入れるため。煮汁が回るように弱~中火でポコポコと沸いている状態を保ち、10分ほど煮たら仕上げの味噌を加えます。2回目は香り、風味づけ。量は味を見て調整してください。溶けてひと煮立ちすれば完成です。

鯖の味噌煮

鯖の味噌煮

コツ・ポイント

魚の煮物は、火の通りが均一になるよう十字に切り目を入れます。大事なのが煮る前の「霜降り」。熱湯をかけて表面が白くなったら、流水で血合いやうろこをしっかり落とし、臭みを取ります。煮始めは強火に、煮立ったら中火で甘みを浸透させて。味噌は2回に分けて加え、弱火で味をしみ込ませます。

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作る前に理想をイメージすることが、迷わない秘訣

作る前に理想をイメージすることが、迷わない秘訣

料理をするときは、作り始める前にどんな料理に仕上げたいか、スタートからゴールまでをイメージすることが大切です。魚の切り目はどう入れるか、先に味をしみ込ませたいのか、臭みはどう取るのか、火加減、仕上げの色合い、香り、盛りつけなど、自分なりの理想を追っておきます。すると、焼き上がる少し前にたれを塗りはじめる、煮上がる前に味噌を溶き入れるといった手順も、案外迷いなく行けるもの。料理は後戻りできないので、このタイミングが大事、こんな料理が食べたいというイメージトレーニングが、迷いをなくします。

今回ご紹介した幽庵焼きは、ぶりや鯵、いわし、さわら、太刀魚、金目鯛など、いろいろな魚で作ることができますので、ぜひ季節の魚でチャレンジしてください。

味噌煮の味噌は、信州味噌と西京白味噌をブレンドしました。もしご自宅に赤味噌があれば、少し足すと深みが増します。ブレンドの割合もお好みで。夏場は赤味噌を中心にして田舎味噌と白味噌を少しずつ加えガツンと存在感のある味に、冬場は田舎味噌を中心に赤と白を混ぜたほっこり味など、理想をイメージしていろいろ組み合わせてみてください。次第に家の味ができあがっていくと思います。

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  • 文:須永久美
  • 写真:キッチンミノル