名店のまかないレシピ

石川勉 / トラットリア シチリアーナ・ドンチッチョ 本格シチリア料理をまかないでも スパゲッティノルマ

イタリア・シチリア島の本場の味を楽しめる名店として、2006年のオープン以来、賑わいを絶やさない「トラットリア シチリアーナ・ドンチッチョ」。料理の味はもちろんのこと、地中海の陽光をそのまま持ち込んだかのような明るい店内と、その空間に活気を吹き込むスタッフの笑顔に魅せられて、足繁く通うというファンは多い。18時のオープンに向けての仕込みの間、15時半になるとスタッフ全員がテーブルを囲んで集まりました。「ボナペティート!(いただきます!)」の声と共に、まるで“家族のだんらん”のようなまかないの時間が始まりました。

シチリアの家族経営店のような温かさを目指して

シチリアの家族経営店のような温かさを目指して

1984年にシチリア島に渡って修業していたとき、本場のトラットリアの雰囲気に惹かれ、日本で店を構えたら同じように再現したいと思ったんです。食べるのが好き、飲むのが好き、しゃべるのが好き。そんな活気のある店を作るために一番大事にしてきたのは、うちで働くスタッフ全員が本当の家族のような関係性を築いて、自然に温かくお客様を迎えられるような雰囲気を育てていくこと。

店の雰囲気というのは挨拶一つで決まるものだと思うから「挨拶と返事はしっかりしろよ」と伝えてきたけれど、自然ににじみ出る姿勢みたいなものは、言われてすぐにできるというものじゃない。だから、大切にしているのは、本当の家族のように食事を一緒に囲むまかないの時間。交代で一人ずつ食べるというのはうちではあり得なくて、必ず決まった時間に全員が顔を合わせながら、同じ料理を食べるというルール。毎日15時半になったら親父を囲んで飯を食うぞというのが、ドンチッチョという「家」の“家訓”みたいなもんですね。イタリアの各地で修業したいくつかの店でもそんなスタイルでした。

地方から上京してきたばかりの一年生も含めて、うちは若い男ばかり。色気も何もありませんが、仲はいいほうだと思います。育った環境が違う人間同士なんだから、四六時中顔を合わせていたらケンカもするし、「あいつ、元気ねぇな」と気づく時もありますよ。自分が彼らの親父みたいな存在になれているといいですね。

大皿料理で取り分けの練習も

大皿料理で取り分けの練習も

まかないで食べるのはやっぱりイタリアンが中心。うちはイタリア料理を出している店ですし、料理の腕を磨くには実際に作って食べてもらって、「うまい」「まずい」と言ってもらう場数を踏むことが早道だと思っているので。いきなり一年生に作らせるということはなく、まずはまかないを食べながらうちの店の味がどういうものだという感覚をつかんでもらうようにしています。

献立はパスタとメインの組み合わせが多いですね。どちらも大皿に盛って取り分けます。お客様の前で手早くきれいに取り分ける練習も兼ねているんです。

料理と一緒にワインも皆で飲みますよ。「食事の時間を楽しく」という意図もありますが、料理とワインの相性を自分の舌で確かめていると、お客様にも自信を持って説明できるじゃないですか。「このワインに、この味付け、いけるね」なんて皆で話しながら、ワインとの相性も考えながら料理の味を決めていく時間にもなっています。あまり飲み過ぎちゃいけないけれど(笑)。

うちは午前中から仕込みを始めているので、店で過ごす時間が本当に長いんです。仕込みの間はずっとラジオをかけて、手を動かしながらでも流行りの歌やニュースや天気予報を耳に入れられるようにしています。そうすると自然と話題のネタを取り込めるから、一人でいらしたお客様も退屈させないでしょう。

目指しているのは、お客様に元気になってもらえる店。「今日は疲れてたんだけど、ここに来たらなんだか食欲が出て、たくさん食べちゃったよ」。そんなふうに言ってもらえると最高にうれしいですね。

スパゲッティ ノルマ と 地鶏のシチリア風ロースト

スパゲッティ ノルマ と 地鶏のシチリア風ロースト

コツ・ポイント

スパゲッティ ノルマは、トマトソースにひとつまみの砂糖を加えてほのかな甘みを出すのがポイント。トマト缶によって濃度が異なるので、開けた時水気が少ない場合は、水を足して味の濃度を調整して。

地鶏のシチリア風ローストは、オーブンで焼く前にブイヨンを鶏肉にまんべんなく回しかけることで、鶏から出る脂とブイヨンのうまみが混ざり合っておいしくなります。オレガノは香りの強いシチリア産がおすすめ。

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  • 文:宮本恵理子
  • 写真:平瀬夏彦