発酵特集

酒井シェフのテーマ食材 「ヨーグルト」
酒井研野シェフ
1990年1月29日、青森県生まれ。
日本料理
菊乃井 本店(京都) 料理人 (2017年9月現在)
大阪辻調理師専門学校 調理本科を卒業後、「菊乃井」(京都)入社。2年目に蓋物、4年目に八寸、6年目に向板となる。主人・村田吉弘氏から学びを深め、「日本料理を世界の料理にしたい」と、今後の料理への想いをさらに強めている。
日本料理では使わないヨーグルトで、新しい味を。
《ヨーグルト その1》即席 乳酸発酵浅漬け
ヨーグルトは通常和食では使わない食材ですが、せっかく《発酵》という自由なテーマなので、使い慣れた味噌や醤油ではなく、なにか面白い食材がいいいかな、と。ヨーグルトなら、ご家庭で馴染みのあるものですからね。 私は青森出身で、家の近くにリンゴ畑があるような環境で育ち、母と祖母が作る食事は毎日三食、地元で採れた野菜や果物を使った料理や漬物が並びました。京都に来てからは、こちらの漬物も好きになりましたけど、やはり故郷で食べていたあの野趣あふれる浅漬けが、私の味のルーツになっていると思います。 ヨーグルトで漬け込むこの浅漬けは、酸味がさわやかな味わいになります。見方によってはサラダじゃないの、と言われてしまうかもしれませんが、あえて浅漬けとネーミングしました。おいしく仕上げるポイントは、《脱水》を十分にすることに尽きます。脱水が不十分ですと、味がぼけてしまいます。野菜の重さに対し2%の塩でよく揉むことで野菜に含まれる水分をしっかりと出し、さらに水切りを丁寧に行ってください。 リンゴはヨーグルトにとても合うので入れています。野菜は旬のものを組み合わせるなど、好みの野菜をたっぷり入れて作ってみてください。

《ヨーグルト その2》鶏の白幽庵焼き
日本料理のなかでもポピュラーな「幽庵焼き」は、和食の焼き物のひとつで、そのつけ汁を「幽庵地」といいます。通常は醤油・酒・味醂=1:1:1の割合で混ぜ、ユズやカボスのなど柑橘の輪切りを加えて魚や鶏肉を漬け込む調味液です。そこにヨーグルトをミックスし、「白幽庵地」にアレンジしました。 調味料で味を含ませつつ、ヨーグルトの作用で肉をやわらかくジューシーに仕上げることができます。できれば一晩漬け込み、翌日焼いたほうが、味がなじんでいるのでよりおいしくなります。普通の調理では、幽庵地はつけ汁としてしか使いませんが、この白幽庵地は片栗粉でとろみをつけることで、ソースに仕立てました。鶏肉や添えた野菜をこのソースと共においしく召し上がってください。
いつか海外から日本料理を見てみたい。その夢を叶えたい。
2009年菊乃井 本店に入社し、今年で9年目になりました。おかげさまで、煮方以外の全ての部門を経験させていただきましたが、日本料理の面白さ、奥の深さにハマるいっぽうの自分がいます。まだしばらくは、菊乃井 本店に身を置いて勉強したいと思っていますが、いつか外から日本を見てみたい、という夢があります。海外に出て、日本料理がどのように広がっているのか、外国の方には、どんな料理が受け入れられるのか、海外の和食がどんな風に変化しているのか、など、知りたいことがいっぱいあります。そんな疑問の答えを見つけながら、さらに見聞を広げることができるような仕事を、いつか外国で経験してみたいですね。 2016年、2017年と『RED-U35』に出場することができ、その経験を経て、今まで考えていた日本料理に留まらず、もっと違う表現ができるんじゃないか、などそんなことも模索するようになりました。次はもっと力をつけてから出場して優勝を狙いたい、と心に誓っています。
酒井シェフの「ヨーグルト」レシピ
即席 乳酸発酵浅漬け
特長
ヨーグルト漬けの漬物は、爽やかな酸味があとを引き、いくらでも食べられそうなおいしさです。野菜の他にリンゴが入っていたので、故郷・青森へのオマージュと思いきや、ヨーグルトと相性がいいので入れたとか。なるほど、リンゴの甘酢っぱさと食感が心地良いアクセントになっています。食欲が落ちているときになどでもサクサク食べられ、栄養補給にもグッド。定番にしたいおかずです。
コツ・ポイント
野菜の重量から計算して、2%の塩の量を必ず守ってください。ビニール袋に野菜と塩を入れると揉み込みやすくなります。出た水分は固く絞って水切りを完璧にすることが大事です。最後にミントをあしらい、フレッシュ感をプラスします。
鶏の白幽庵焼き
特長
清々しい柑橘の香りを味わう幽庵焼きが、意外な食材・ヨーグルトのチカラでさらに味わい深く、うれしい変化を遂げた鶏肉料理に仕上がっています。みじん切りにして加えた香味野菜と柚子の香りが食欲をそそります。この酒井さんオリジナルの《白幽庵地》をソースとして利用するアイデアにも驚きです。鶏肉以外に、白身魚やサーモンなどでもおいしくいただけます。
コツ・ポイント
幽庵地にヨーグルトを加えることで、肉がやわらかくジューシーに仕上がります。酒・みりん・薄口醤油を強火にかけてアルコール分を飛ばし、室温まで冷ましてからヨーグルトを加えましょう。鶏もも肉は一晩漬け込んだほうがおいしいのでお勧めです。

明日の才能、未知なる美味を発掘する
2013年に幕を開けた、新時代の若き才能を発掘する日本最大級の料理人コンペティションRED U-35 (RYORININ’s EMERGING DREAM)。夢と野望を抱く、新しい世代の、新しい価値観の料理人(クリエイター)を見いだし、世の中に後押ししていくため、これまでの料理コンテストとはまったく異なる視点で、日本の食業界の総力を挙げて開催する料理人コンペティションです。
2017年大会へのコメント
歴代のレッドエッグ受賞者を見れば明らかであるように、このコンペティションで問われるのは“基本”です。
それは、料理に対する知識や技量のみならず、社会人として身につけておくべき知識や礼儀なども含みます。
挑戦者には、奇をてらうことなくこの“基本”に忠実に、その上で“個”というものを表現していただきたいのです。
ためらっていては何も始まりません。とにかくチャレンジしてください。
若き才能の挑戦を待っています。
脇屋友詞
Wakiya一笑美茶樓 オーナーシェフ
RED U-35 プロジェクトメンバー
RED U-35 2017 審査員
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審査員長
脇屋友詞
Wakiya一笑美茶樓
オーナーシェフ -
審査員
落合務
La BETTOLA
オーナーシェフ -
審査員
田崎真也
ソムリエ
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審査員
德岡邦夫
京都 𠮷兆
総料理長 -
審査員
千住明
作曲家
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審査員
辻芳樹
学校法人辻料理学館
辻調理師専門学校
理事長・校長 -
審査員
鎧塚俊彦
Toshi Yoroizuka
オーナーシェフ -
審査員
狐野扶実子
料理プロデューサー
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審査員
生江史伸
レフェルヴェソンス
シェフ -
審査員
黒木純
くろぎ
主人
RED U-35 総合プロデューサー
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総合プロデューサー
小山薫堂
放送作家
RED U-35 発起人
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発起人
岸朝子(故人)
食生活ジャーナリスト
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発起人
滝久雄
株式会社ぐるなび
代表取締役会長 CEO
創業者