発酵特集

藤尾シェフのテーマ食材 「甘酒」
藤尾康浩シェフ
1987年12月28日、大阪府生まれ。
フランス料理
La Cime(大阪) スーシェフ (2017年8月現在)
1987年大阪府生まれ。15歳でイギリスに留学し、パリの大学在学中にフランス料理に興味をもつ。「パッサージュ・サンコントワ」(パリ)で3カ月の研修を受け、「Mirazur」(南フランス)で働いた後、帰国。2012年「La Cime」(大阪)に弟子入りし、スーシェフを務めている。
どんな素材とも相性のいい甘酒の特徴を生かして。
《甘酒 その1》甘酒のヴィネグレットとイチジクのとサラダ
『発酵』というテーマは、そこまでちゃんと考えたことのなかった分野でした。甘酒は歴史のある伝統的な甘味飲料ですが、近年、健康法のひとつとして見直されています。私も好きですし、父も毎日健康のために飲んでいます。今回テーマ食材を甘酒に決めたものの、フランス料理を作っている自分には、食材としての馴染みがないものだったので、いろいろと試作を重ねてみました。 いちばん感じたのは、素材と合わせると甘酒そのものの味が薄れる、ということです。つまり、どんな食材とも合わせやすい。甘酒のやさしい甘さとトロリとした舌ざわりの特長を生かし、米酢と合わせてヴィネグレットソースにしてみたら、砂糖を使うよりも味がマイルドに仕上がりました。例えれば味はトマトに近く、酸味が優しいドレッシングです。 この甘酒のヴィネグレットは、フルーツを入れたサラダによく合います。レシピではイチジクを使いました。また、夏野菜のトマト、水ナスなどに合わせてもおいしいですよ。

《甘酒 その2》甘酒のスフレ
甘酒はその独特の甘さを生かすこともできますし、麹の力を借りて肉などを漬け込んで柔らかくすることもできる、面白い食材だと思います。このスフレは甘酒の持つ『味』を生かして考えたレシピです。通常は砂糖を使いますが、メレンゲにだけ砂糖を使い、生地のベースの味付けは甘酒だけにしています。甘酒の味をできるだけ残したいので、卵黄の量も通常より控えめにしています。 フワフワ食感のスフレにするには、ちゃんと生地を混ぜることに尽きます。生地とメレンゲを混ぜる時、どうしても泡はつぶれますが、それを怖がって混ぜ方が足りないと、焼き上がりにムラが出てしまいます。ある程度は泡がつぶれても良いという気持ちで、しっかりと混ぜてください。ただ、全部の泡をつぶしてしまうと膨らみませんので注意しましょう。 ふわりと空気をはらんで焼きあがったスフレを、アツアツの状態で召し上がってほしいですね。
いつかイギリスで、フランス料理のシェフとして店を持ちたい。
そこに《チャンス》があれば、挑戦するのは当たり前、そんな気持ちで私は『RED U-35』エントリーしました。ファイナリストに残り、《ゴールドエッグ》を受賞できたことで、さまざまなチャンスが広がったことは大きな喜びです。 私はパリの大学在学中に、料理に目覚めました。フランスは料理人の個性で店を繁盛させている店が多いのですが、そこで楽しそうに飲んだり食べたりしているフランス人の、料理との《距離の近さ》に感動したのがきっかけです。将来は高校時代を過ごしたイギリスで、日本人シェフとしてフランス料理店を開きたい、そんな目標を持っています。それにはまだまだ身につけなければいけないことがたくさんあるので、もうしばらくは地元大阪で経験を重ねて、もっと成長したいと思っています。
藤尾シェフの「甘酒」レシピ
甘酒のヴィネグレットとイチジクのとサラダ
特長
甘酒独特のとろみの重たい食感が、フレンチのスタイルにピタリとハマったドレッシング。甘酒+米酢という和風の組み合わせにも関わらず、その味わいはどこか洋風テイスト。葉野菜のサラダだけでなく、スティック状にカットした根菜やセロリなどの、サラダディップとしてつけながら食べてもおいしそう。魚料理のソースとしても使えます。1~2週間は保存がきくので、多めに作って冷蔵庫に常備したいソースです。
コツ・ポイント
ヴィネグレットは、まずオリーブオイルと菜種油以外の調味料をホイッパ一で力強く攪拌し、十分に混ぜ合わせてからオイルを入れ、全体をざっくりと混ぜること。 カブやイチジクは、しっかりと角が立つようにサイズを揃えて切ると、盛り付けたとき綺麗に仕上がります。
甘酒のスフレ
特長
甘酒の持つやさしい甘みに感動するデザート。オーブンから取り出したばかりのアツアツを、スプーンでひとすくい。砂糖で作るものとは違う、ほんのりとした甘さが口の中に広がったと思ったらすぐに溶けてしまうかのような繊細さ。その瞬間、甘酒の香りもふわりと感じます。みるみるうちにしぼんでしまうので、焼きあがったらすぐ、熱いうちにいただくのがベストです。
コツ・ポイント
メレンゲは立てすぎるとうまくいかないので、逆さまにして落ちない程度の固さ、を目安に立てます。メレンゲと生地のベースは、泡が潰れるのを気にせず均一になるまでしっかり混ぜ合わせましょう。合わせた生地をホイッパーですくい上げて垂らしたとき、数秒後に跡が消える位の固さが理想的。

明日の才能、未知なる美味を発掘する
2013年に幕を開けた、新時代の若き才能を発掘する日本最大級の料理人コンペティションRED U-35 (RYORININ’s EMERGING DREAM)。夢と野望を抱く、新しい世代の、新しい価値観の料理人(クリエイター)を見いだし、世の中に後押ししていくため、これまでの料理コンテストとはまったく異なる視点で、日本の食業界の総力を挙げて開催する料理人コンペティションです。
2017年大会へのコメント
歴代のレッドエッグ受賞者を見れば明らかであるように、このコンペティションで問われるのは“基本”です。
それは、料理に対する知識や技量のみならず、社会人として身につけておくべき知識や礼儀なども含みます。
挑戦者には、奇をてらうことなくこの“基本”に忠実に、その上で“個”というものを表現していただきたいのです。
ためらっていては何も始まりません。とにかくチャレンジしてください。
若き才能の挑戦を待っています。
脇屋友詞
Wakiya一笑美茶樓 オーナーシェフ
RED U-35 プロジェクトメンバー
RED U-35 2017 審査員
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審査員長
脇屋友詞
Wakiya一笑美茶樓
オーナーシェフ -
審査員
落合務
La BETTOLA
オーナーシェフ -
審査員
田崎真也
ソムリエ
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審査員
德岡邦夫
京都 𠮷兆
総料理長 -
審査員
千住明
作曲家
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審査員
辻芳樹
学校法人辻料理学館
辻調理師専門学校
理事長・校長 -
審査員
鎧塚俊彦
Toshi Yoroizuka
オーナーシェフ -
審査員
狐野扶実子
料理プロデューサー
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審査員
生江史伸
レフェルヴェソンス
シェフ -
審査員
黒木純
くろぎ
主人
RED U-35 総合プロデューサー
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総合プロデューサー
小山薫堂
放送作家
RED U-35 発起人
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発起人
岸朝子(故人)
食生活ジャーナリスト
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発起人
滝久雄
株式会社ぐるなび
代表取締役会長 CEO
創業者