発酵特集

成田シェフのテーマ食材 「アンチョビ」
成田陽平シェフ
1985年11月6日、青森県生まれ。
日本料理
菊乃井 本店(京都) 料理人 (2017年7月現在)
東京調理師専門学校 西洋料理専攻。「ル・ブルギニオン」(東京・西麻布)でフレンチの料理人として料理人人生をスタートさせる。25歳で渡仏し、「ル・ジャルダン・デ・サンス」(モンペリエ)、「アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ」(パリ)を経て、27歳の時「菊乃井」主人 村田吉弘氏との出会いから日本料理へ転身。菊乃井本店にて日本人料理人として働き始める。
日本料理では使わない素材を、調味料として。
《アンチョビ その1》アンチョビおから
実は、どの発酵食品をテーマ食材にするか、決めるまでだいぶ迷いました。アンチョビは日本料理では使わないし、フランス料理でもめったに使いません。同じように魚を発酵させて作る和の調味料の「魚醤」や「しょっつる」でもおいしく作れますが、それではちょっと面白くないなと思いまして。
アンチョビを選んだのは、普段日本料理では使われない食材だけれども、ポンと入れ込める素材だと感じたからです。アンチョビには塩分と独特の旨味があるので、まずは調味料としてその味を楽しめる料理を作ってみたいと思いました。おからは、店ではお出ししていない料理ですが、まかないでよく作る料理なんです。食べるとそれほどアンチョビの風味は感じませんが、まさに《かくし味》として、いい仕事をしてくれます。具の鶏肉とアンチョビの複雑な旨味がうまくまとまって、普通のおからよりも、より味わい深いおからに仕上がりました。
おかずによし、お酒のアテによし、調理も簡単ですので、ぜひ作ってみてください。

《アンチョビ その2》鰯と新生姜の炊き込みご飯
アンチョビはカタクチイワシの塩漬けしたものですので、夏らしく、イキのいい鰯と新生姜を一緒に炊き込んでみました。アンチョビからいい旨味が出ますので、他の出汁を加えなくてもしっかりと味が入り、フレッシュな風味が楽しめるおいしい炊き込みご飯が出来上がりました。すべての材料を炊飯器に入れて炊き上げるだけの簡単料理です。
ポイントは、ごま油でアンチョビを弱火でゆっくりと煮溶かすことでしょうか。イタリア料理のパスタソースを作るときの手順と同じですね。この手間で塩分がまろやかになり、旨味を引き出します。ごま油の量が30ccと多めに感じますが、そのまま米と一緒に炊き込むので、出来上がりに油分はそれほど感じません。
土鍋や厚手の鍋を使い直火で炊く場合、鰯は最初からのせません。鍋を火にかけて水が沸騰した段階で米の上に並べて炊いたほうが、おいしく仕上がります。沸騰まで約10分、鰯を入れて弱火にして約8分炊けば完成です。
日本料理を土台にしながら、自分らしい表現を料理に。
私は東京とフランスで6年ほどフレンチの修業をしたのち、日本料理の世界に飛び込みました。経験こそ10年ありますが、日本料理の世界では、まだまだ新参者です。しかし『RED U-35』に参加し、審査員の方々をはじめ、志の高い素晴らしい料理人の方々と大勢出会い、言葉に表せないほどの刺激を受けました。まだまだ将来を語れるほどの経験はありませんが、この先もずっと私は、日本料理の料理人として成長していきたいと思っています。ただ、主軸は日本料理としても、フレンチの修業で得た経験は、料理を多角的に見る目を養ってくれました。それが私の強み、特徴になるのかな、と感じています。今後は日本料理を土台にしながら、自分らしい表現ができるように、技術と感性を鍛えていきたいと思っています。そして再び『RED U-35』にチャレンジして、グランプリ《レッドエッグ》を狙いたいです。
成田シェフの「アンチョビ」レシピ
アンチョビおから
特長
異なる食感と旨味を持つ、様々な具材。鶏ひき肉から出た上品な旨味とアンチョビからでる独特の風味を、おからがうまく吸収して、箸がどんどん進んでしまうおいしいおからです。ふっくらとした出来上がりで、塩分も控えめ。おばんさいの定番であるおからが、アンチョビの力でワンランク上のおいしさに。トッピングした青ゆずの皮の爽やかな香りに夏を感じます。
コツ・ポイント
具材はそれぞれ小さく切り揃え、出汁を入れる前に、アンチョビ入りの油で炒めます。
おからをふっくらと炊き上げるには、たっぷり注いだ出汁を丁寧に煮含めて、水気を飛ばすこと。十分に煮含めないと、べしゃっとしたおからになってしまいます。
鰯と新生姜の炊き込みご飯
特長
初夏から夏が旬の新生姜と鰯を組み合わせた、新生姜の爽やかな香りが楽しめる炊き込みご飯。出汁を使わず、アンチョビの旨味を生かして炊き上げていますが、アンチョビ特有の生臭さは消え、コクと味わいが引き出されています。アンチョビおからをおかずにしてもよく合います。あとはお漬物とお吸い物があれば、献立が完成!? 大満足の夏のごはんです。
コツ・ポイント
アンチョビの下ごしらえが大事なポイントです。ごま油を弱火にかけ、分量のアンチョビをゆっくり溶かすことで旨味を出し、塩気をまろやかに。香りがほのかで上品な太白ごま油を使いましょう。土鍋などを使って直火で炊く場合は、水が沸騰してから鰯をのせましょう。

明日の才能、未知なる美味を発掘する
2013年に幕を開けた、新時代の若き才能を発掘する日本最大級の料理人コンペティションRED U-35 (RYORININ’s EMERGING DREAM)。夢と野望を抱く、新しい世代の、新しい価値観の料理人(クリエイター)を見いだし、世の中に後押ししていくため、これまでの料理コンテストとはまったく異なる視点で、日本の食業界の総力を挙げて開催する料理人コンペティションです。
2017年大会へのコメント
歴代のレッドエッグ受賞者を見れば明らかであるように、このコンペティションで問われるのは“基本”です。
それは、料理に対する知識や技量のみならず、社会人として身につけておくべき知識や礼儀なども含みます。
挑戦者には、奇をてらうことなくこの“基本”に忠実に、その上で“個”というものを表現していただきたいのです。
ためらっていては何も始まりません。とにかくチャレンジしてください。
若き才能の挑戦を待っています。
脇屋友詞
Wakiya一笑美茶樓 オーナーシェフ
RED U-35 プロジェクトメンバー
RED U-35 2017 審査員
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審査員長
脇屋友詞
Wakiya一笑美茶樓
オーナーシェフ -
審査員
落合務
La BETTOLA
オーナーシェフ -
審査員
田崎真也
ソムリエ
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審査員
德岡邦夫
京都 𠮷兆
総料理長 -
審査員
千住明
作曲家
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審査員
辻芳樹
学校法人辻料理学館
辻調理師専門学校
理事長・校長 -
審査員
鎧塚俊彦
Toshi Yoroizuka
オーナーシェフ -
審査員
狐野扶実子
料理プロデューサー
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審査員
生江史伸
レフェルヴェソンス
シェフ -
審査員
黒木純
くろぎ
主人
RED U-35 総合プロデューサー
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総合プロデューサー
小山薫堂
放送作家
RED U-35 発起人
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発起人
岸朝子(故人)
食生活ジャーナリスト
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発起人
滝久雄
株式会社ぐるなび
代表取締役会長 CEO
創業者